2025年9月5日、静岡県牧之原市〜吉田町で日本版改良藤田スケール(JEF)で「JEF3」相当、推定風速約75m/sの竜巻が発生しました。
約半年後の2026年2月に当時被害に遭われた方に取材を行いました。当日の状況を考察し、どういった備えが必要なのか、自分の身を守るためにすべきことなどを解説します。
静岡の竜巻被害発生状況と被害の概況
2025年9月5日当日は台風15号が接近しており、事前に線状降水帯の発生も予測されていました。
今回取材させていただいた3組の皆様も近くの用水路があふれたりしないかなどは懸念されている状況でしたが、竜巻が来るとも思っていなかったそうです。
被害に遭っている最中もこれが竜巻だとはわからず、後から竜巻だったと知ったという状況でした。
当日の台風15号の動き
静岡地方気象台が発表しているの当日の気象の概要です。
台風第15 号は、9 月4 日3 時に奄美大島の東で発生した後、北に進んで九州にかなり接近し、次第に進路を東よりに変え、西日本の太平洋側沿岸を進んだ。5 日1 時頃に高知県宿毛市付近に上陸し、9 時頃に和歌山県北部に再上陸した。台風はさらに東日本太平洋側沿岸を東北東に進み、13 時に牧之原市付近、14 時に伊豆市付近を通過し、16 時に房総半島に進み、21 時に日本の東で温帯低気圧に変わった(以上、速報解析による)。
静岡県では、台風周辺や太平洋高気圧の縁を回る暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で4 日から断続的に雨が降り続いた。特に、5 日昼過ぎを中心に、線状降水帯が複数回発生し、非常に激しい雨や猛烈な雨となった。これらの雨により、4 地点で1 時間降水量は統計開始以来の1 位を更新し、記録的な大雨となった。また、台風の接近により沿岸部で暴風が吹いた所があった。さらに台風からの暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、大気の状態が非常に不安定となり、発達した積乱雲が通過した牧之原市から吉田町にかけて竜巻が発生するなど、菊川市、掛川市、焼津市及び伊東市で竜巻などによる突風が発生した。
竜巻発生のメカニズム
先ほどの文面の、“台風からの暖かく湿った空気が流れ込んだ影響で、大気の状態が非常に不安定となり、発達した積乱雲が通過した牧之原市から吉田町にかけて竜巻が発生”とあるように、暖かい空気(暖まった空気は膨張し軽くなり上に行きたがる)が地上付近にあり、冷たい空気が上空にある場合、強い上昇気流が発生します。
海上で水分を含んだ暖かい上昇気流は、上空で冷やされることで、雲となり積乱雲を形成します。その時に、地上付近を舞っていたいた風が上に強く引き伸ばされることで、独楽のように回転速度が上がり猛烈な風を引き起こします。
これが竜巻の正体です。
今回の牧之原市の被害では、1つの竜巻ではなく同時多発的に竜巻が起こり、複数の竜巻がもたらした被害だということが分かっています。
静岡での竜巻の被害の概況
静岡県危機管理部危機対応課が発表している台風第15号による被害状況について【第37報】(11月28日14時現在)
牧之原市、吉田町で死者1名、重軽傷者90名、住宅の全壊76棟、半壊や一部損壊は2,071棟と大きな被害を被りました。
また、ライフラインは中部電力管内で停電が発生し、最大19,860戸で停電が発生し4~5日電気が使えない状況となったようです。
また、通信もNTT西日本で通信障害が発生し、インターネットがつながらないといった状況が続きました。
一部の道路では電柱がなぎ倒され、通行止めも発生しました。

被災された方の取材から明らかになったこと①被災当日
地震や津波の被害は、熊本の地震や東北の震災などで知っていましたが、竜巻の被害は映像なども少ないことから想像しにくく、どういった状況だったのか想像できませんでした。
取材させていただいた3家族の皆様から伺ったお話から、竜巻の発生中どのような状況だったのかを考えてみたいと思います。
【ケース1】風と振動で窓が割れる
A様は、築50年ほどの木造住宅にお住まいでした。当日は昼食を済ませ、テレビを見て過ごしていたそうです。
台風の接近は事前に把握しており、近くを流れる用水路が氾濫しないか心配されていたとのことでした。
12時50分ごろ、2階から突然大きな音がしたため、様子を見に2階へ上がったそうです。すると、2階の窓ガラスが割れており、どうすることもできない状況だったといいます。
その後1階に降りて外を見ると、自宅の瓦がガラガラと落ちてきており、さらにサッシの枠や外壁のフェンス、大きな鉄骨までもが飛来してくるのを目の当たりにしました。恐怖でたまらなかったそうで、「2階の窓のある部屋で寝ていなくて本当によかった」とおっしゃっていました。
割れた窓ガラスの外側には雨戸のサッシがありましたが、そちらにはまったく被害がなく、室内にも飛来物は落ちていなかったことから、A様は飛来物ではなく、強風そのものの影響で窓ガラスが割れたのではないかと話されています。風の圧力や振動によって窓ガラスが破損するほど、当時の風速が非常に強かったことがうかがえます。
【ケース2】風で家が傾く
B様も、築50年ほどの木造住宅で被害に遭われました。線状降水帯による大雨については、以前から心配されていたそうです。
最初に異変に気付かれたのは、トイレの窓が閉まらなくなったことでした。外は風が非常に強く、あたり一面が真っ白になるほどの状況だったといいます。
トイレにある小さな窓が閉まらず困っている最中、突然、玄関のガラスが割れました。さらに、その左右にある1階の部屋の窓ガラスもすべて割れてしまい、破片はすべて室内に散乱したそうです。
B様のお宅では、近くにあるスレート工場の破片が飛来して衝突したのではないかと考えられています。障子も骨組みがバリバリに壊れ、木の枠まで割れてしまったとのことでした。
また、竜巻被害の後は、窓を閉めても上にいくほど隙間ができる状態になってしまい、「家そのものが強風で歪んでしまったのではないか」と感じておられました。屋根の瓦も波打つような状態になっていたそうです。
なお、自治体による被害認定調査では、「半壊」との診断を受けたことも教えてくださいました。
【ケース3】アンカーで固定された物置が吹っ飛ぶ
C様はセキスイハイムの住宅に住まれていました。
当日は奥様だけがご在宅で、夜勤明けでお風呂に入られていたそうです。
お風呂の窓についているブライドルーバーが大きな音を立てて破損、びっくりして外に出てみると、家の庭にあるはずの大きな物置とウッドデッキがなくなっていたそうです。

びっくりしてご主人に電話したところ、そんな馬鹿なという反応だったそう。
「ウッドデッキは建物と固定されており、物置だってアンカーを打ってあり、中にはバイクも格納されており、そんなものが飛ぶわけないだろう」とご主人は思ったそうです。
通話をビデオ通話に切り替えて外の映像を見せたところ、ようやく信じてもらえたとのこと。



被災された方の取材から明らかになったこと②被災その後
すさまじい風は、約5分ほどの出来事だったそうです。生きた心地がせず「怖かった」と口をそろえておっしゃっていました。
しかし、さらに大変だったのは被災後の生活でした。
電気がない4日間
A様は、ご親族が発電機を所有されていたため、発電機を借りることができました。C様は蓄電池付のセキスイハイムの家にお住まいだったため冷蔵庫もTVも使えたそうです。
B様は、電気の無い生活を体験されたそうです。
「水とガスは使えたが、電気がないので給湯器は使えずお風呂は入れなかった。冷蔵庫のものはすべて捨てちゃった。携帯もずっとつながらない、さらに照明がないと不安。当然周囲も停電しているので、夜も真っ暗。ガタンという音がすると誰が来たのか?と不安に。電気ってありがたいですね」と語っていただきました。
牧之原市周辺も、瓦礫の中にある金属を狙った集団が確認されており、不安に感じる人もいたそうです。
また、不慣れな発電機を室内利用したことで、一酸化炭素中毒による事故の発生もあったとのことです。
修理、リフォームの先が見えない状況
B様は、最終的にセキスイハイムでの建替えを決断されましたが、当初は修理する方向で考えていたそうです。
「業者に見積もりをもらったが一向に進む感じがない。どこもそういう感じで、いつになったら修理できるの先が見えない状況でした」とお話いただきました。
建物はあるものの、ガラスは割れて応急処置のブルーシートが貼ってある状況での生活が続き、先の見通しが立たない生活はつらいものがあります。

その時、セキスイハイムは
C様にセキスイハイムの被災後の対応についてお伺いしました。
竜巻の直後には、お客様センターの担当者が走り回っていたそうです。各種連絡先が書かれた紙を配り、ここに連絡を入れるようにと動いていたとのこと。
「私の家には、すぐに営業担当者も駆けつけてくれて、安心感がありました。翌日には、セキスイハイムの職人を乗せたハイエースが4台ほど来てくれて、応急処置をしてくれました。自分たちでテープで固定したブルーシートとは違い、これで、雨風が家の中に入ってこないな」と、ありがたかったそうです。


竜巻被害を防ぐために
竜巻は他人事ではありません。
牧之原・吉田町だけでなく、静岡県内でも各所で竜巻は発生しています。また、太平洋沿岸地域でも静岡県は台風の発生件数が多いことが分かります。
外出時が一番危険
今回取材をさせていただいた3家族の皆様は、職場や家の中にいたので怪我はありませんでした。
特に12時50分という時間も昼食後で家にいる方が多く、不幸中の幸いだったのかもしれません。
では、外にいた場合どうするべきでしょうか。
まずは近くの建物に避難をするのが第一です。
窓ガラスや家の外壁まで破壊する威力を持った風と飛来物に対して、生身の人間は危険すぎます。すぐに近くの建物に逃げ込みましょう。
できれば公共施設やビル、マンションなどの頑丈な建物が理想です。避難できない場合は、物陰や溝で姿勢を低くし、頭部・頸部を保護しましょう。
先ほどの取材でもあった通り、物置や車は一緒に飛ばさせる危険があるので避けます。電柱や樹木なども倒れてくる危険性があるので避けます。
危険予知も大切です。台風や線状降水帯など天候が不安定な場合は極力外出を避けるようにしましょう。

室内にいる場合
2階の被害が大きく、瓦や、屋根そのものも飛ばされているケースもあります。
まずは1階に避難します。
雨戸やシャッターがあれば閉めるのが無難ですが、閉めようとした瞬間に飛来物に当たる危険性もあるので、天候が荒れる予報が出ているときはあらかじめ閉めておくことがベストです。
閉められない場合は、無理に閉めようとせず窓から離れ、できれば窓のない家の中心部分に避難しましょう。
ガラスの破片で怪我をされた方もいたようです。カーテンを閉めておくとガラスの飛散が抑制できる場合もあるので、閉めておくと良いでしょう。

新築で家を建てる際に検討しておくこと
- 屋根と外壁。瓦がガラガラ落ちる被害も非常に多く見られました。また、飛来物が外壁にぶつかって外壁ごと飛ばされるケースもありました。瓦を使わない屋根、丈夫な外壁(タイル外壁)なども検討すると良いでしょう。
- タンクレストイレの使い方を知っておく。最近増えつつあるタンクレストイレ。停電時にも使用できますが、通常の使い方とは使用方法が異なります。「トイレが流せなくて困る!」となる前に、停電時の利用方法など家族で確認しておきましょう。
- アフターサービスがどの程度対応してくれるか。応急処置を迅速にしてくれるような体制が整っているかどうかも確認してみましょう。リフォーム工事もすぐにスタートできない場合も多いです。(保険請求・見積もり・緊急度合いによる優先順位)
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いかがでしたでしょうか。
自然の驚異的な力の前では、人は無力ではありますが、想像して準備しておくことはとても大切です。この記事か参考になれば幸いです。







