シューズクローク(SC)とは、靴を収納するための専用スペースのことを言います。
シューズインクローゼット(SIC)などとも呼ばれます。ベビーカーや大きなスーツケース、ゴルフバック、アウトドア用品など土汚れが付く大型の荷物の収納にも一役買います。
この記事では、シューズクロークの設置の是非について考えたいと思います。
シューズクロークの人気が高まっている理由
シューズクロークが流行りだしたのは、2000年代以降の住宅デザインやライフスタイルの変化、インテリアトレンドの影響、メディアの普及、そして住宅メーカーの提案など、複数の要因が重なった結果といわれています。
特に住宅の設計において収納スペースの重要性が再認識され、用途や人の動線に合わせた適材適所な収納方法が提案されるようになりました。
玄関における収納も靴だけではなく、コートや傘、自転車、スーツケース、ゴルフバック、アウトドア用品といったあまり室内に入れたくないものを収納するスペースが求められるようになった結果、シューズクロークが重宝されるようになりました。
余計な花粉やウィルスなども持ち込みたくないという理由も近年ではありそうです。
シューズクロークの種類
シューズクロークにはいくつか種類が存在します。
ウォークイン型

ウォークインクローゼットと同じですね。
歩いて入るシューズクロークで、出入り口が1つのものを指します。出入り口が1つなので、大きさの割には収納量が確保できます。
ただ気を抜くと、ごみやガラクタのためのスペースにもなりそうです。
ウォークスルー型
ウォークスルー型は通り抜けができるタイプの収納です。


出入り口及び人間が移動するための空間がある分、スペースに対する収納量は少なくなります。
ただし、動線上に靴箱やコートハンガーなどがある為、スムーズな動線になります。
写真の例だと、靴脱いで玄関に上がり、コートを脱いで手を洗ってLDKに入るという流れになります。また、ファミリー玄関(家族玄関)としての機能も持つため、来客用のメインエントランスは常にきれいな状態に保つことができます。
シューズクローク設置の注意事項
では次にシューズクロークの設置の注意点を見ていきましょう。
シューズクロークにすることで他の場所の面積が削られる割りに収納量は増えない
一般的に靴を入れるのに必要な奥行きの長さは30センチほどです。
あえて、シューズクロークにして、人間が動くためのスペースを確保しても靴をしまう収納量が増えるわけではありません。
むしろ、シューズクロークの扉を開けて中に入り、靴をしまいスリッパに履き替えて、玄関に戻ってくるという無駄な労力が発生する可能性もあります。
ベビーカーやゴルフバックなどを入れるスペースは土間収納として確保しつつ、靴箱を多めに配置したほうが使い勝手が良く、収納量も増える可能性もあります。
赤枠の部分を無理にシューズクロークにしてしまうと、和室のスペースが削られる割りには靴の収納量は増えません。


ファミリー玄関にすることで動線や使い勝手が悪化する場合もある

先ほどのウォークスルー玄関の例を見てみましょう。
コートやカバンをどこにしまうかということにもよりますが、ファミリー玄関を作ることにより、動線はLDKから少し遠くなり回り道となります。
私のように、普段履きの靴を靴箱にしまう習慣がない人間だと、ファミリー玄関を作ったとて、玄関で靴を脱いだらそのままLDKに直行になると予想されます。つまり、ファミリー玄関を作ったもの、ただの物置と化し、まったく動線としては機能しなかった!という悲劇に陥る可能性があります。
また、来客が多いご家庭ならともかく、私のように友人が少ない人間だとほとんど来客はありません。
郵便物も置き配です。なにわざわざ、来客用のスペースを広くとり、一番使う家族が小さな空間で窮屈に靴を脱いだり履いたりするという無駄な試練を与えられることとなります。
当社の社員も、シューズクロークを作ったものの普段使いしなかったという報告もありました。
これは、各々の生活習慣や今後家を建てた後にどういった使い方をしたいのかによって変わってきます。何が正解というものではありません。
靴をどこで脱ぐのかをよく考える

先ほどのこの間取りであれば、帰宅時はホール手前で靴を脱ぎ、ホールの部分で靴をしまえます。
外出時も同様で、たたき部分を裸足で通過する必要はありません。
しかし、以下のような間取りで、毎回シューズクロークに靴をしまうことを考えた場合、裸足でたたき部分を横切るか、サンダルなどにわざわざ履き替えるという選択を迫られます。

実際にはこの物件には赤い部分に靴箱が設置されていますので上記のような心配はありません。


空気質の問題
シューズクロークには、靴・傘・レインコート・汚れのついたものが収納されます。
玄関は、もともと室内よりも湿気がたまりやすい場所だったりもします。靴の臭い、湿気によるカビの被害に遭わないように気を付ける必要があります。
セキスイハイムの場合は、第一種換気が採用できますので、室内の空気が玄関も含めて計画的に換気されるので上記のような心配はありません。
第三種換気を検討される場合には、シューズクロークの大きさや設置場所によりますが、換気扇を設置するなどの対策も考えましょう。
ドアを付けるのか、付けないのか
上記に少し関係しますが、仕切りにドアを付けるのか付けないかもよく検討しましょう。
ある程度整理整頓された状態を保てるのであれば、ドアは不要かもしれません。
ゴミ出しの前に、ごみを格納したりなどの使い方をされたい場合はドアを付けておいた方が良いでしょう。
ただし、ドアを付けてしまうと空気がこもってしまうことになりますので、先ほどの換気の問題と合わせて検討が必要です。ロールカーテンなどで、一時的に来客時は見えないようにするパターンもあります。レースのカーテンを施工されている実例もありました。
また、シューズクロークの入り口部分をアール状にしたり、三角形にしたりといった工夫をすることで玄関をおしゃれに魅せる工夫なども是非取り入れてみたいですね。
シューズクロークの実例
さて、ここからはシューズクロークの実例を見ていきましょう。
1,アウトドアや園芸用品も楽々収納できる多用途シューズクローク
ウォークスルーの動線を確保し、家族玄関としての機能をもたせました。
大容量の収納スペースで、玄関は常にすっきり保つことができます。


2,ツーウェイ動線がある便利な家
LDKに直接入れる入り口と、家族用の裏動線がある実例です。
裏動線は直接洗面脱衣お風呂とつながっており、LDKに汚れを持ち込まずに済みます。


3,玄関共用の2世帯住宅
2世帯住宅だと、靴の量も2世帯分となり玄関が乱雑になりがちです。
大容量シューズクロークの玄関の入り口側にはドアを設けてすっきり見せ、LDK側にはアール状の入り口を設けることで便利さとおしゃれさの良いとこ取りを実現しました。



4,ロールカーテンを設置したシューズクローク

家族用の動線と、来客の動線を分け、普段使いでは、ロールカーテンを開けたままにしておくことで、ドアの開け閉めの手間を省けます。
来客時にはロールカーテンを閉めておけば、玄関をすっきり魅せることができます。ロールカーテンは2箇所設置されています。
5,Rの入り口とレースのカーテンで印象的に

L字の上がり框とレースのカーテンで区切られた印象的な玄関。家族が多くても靴を脱いだり履いたりのスペースが確保できて便利です。
奥のレースで仕切られた部分まで土間が続くので汚れたものの出し入れも気を使わなくて済みそうです。
5,三角の入り口と小窓で魅せるSC
自転車置き場としても重宝するシューズクローク。ドアをつけなくてもおしゃれに演出されています。
シューズクロークにも靴の収納がありますが、廊下にも靴収納を設置し、用途を分けて収納することで、便利さと収納量を確保しています。


まとめ
いかがでしたでしょうか。シューズクロークは便利な一方で毎日必ずある「靴の脱ぎ履き」にかかわる重要な部分です。
シューズクロークを設置するべきなのか、土間収納と靴収納を分けたほうが便利なのか、ご自身の生活習慣を想像しながら設置の是非を検討してみてください。
皆様の家づくりの一助となれば幸いです。





