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お施主様向けに基礎工事について解説します

【基礎工事の完全ガイド】
お施主様向けに基礎工事について解説します

このコラムでは基礎工事について解説します。
家づくりで耐震を気にされる方が多いと思いますが、家の構造だけではダメで、「地盤×基礎×建物」それぞれが強さを発揮して初めて災害から身を守ることができます。
建物が強くても、基礎が弱いと当然基礎が壊れて、せっかくの家が住めなくなる可能性もあります。
これから家づくりをされる方は、ある程度基礎についても知っておくことで、今後のトラブルを防げるかもしれません。

基礎とは

基礎とは、建物の土台となる部分をさします。建物の荷重を地盤に伝えるための構造部分です。

現代ではコンクリートの基礎が主流ですが、飛鳥時代に仏教建築が伝来した際には、「礎石」といい、柱の腐食や沈下を防ぐために石を置いたとされます。

明治時代になると、明治維新と共に導入された西洋文化とともに、コンクリートの技術も輸入され、鉄筋コンクリート造の建築物が紹介され徐々に普及していきます。
大正時代になると、基礎工事にもコンクリートが使用されるようになっていきました。

岡山城 旧天守閣の礎石

基礎の重要性

「基礎力」「基礎と応用」「基礎基本」などという言葉があるように、物事の根本となる大事な部分という意味になるほど、「基礎」は大切な部分です。

建築における基礎とは、建物の荷重を地盤に伝えるための構造部分であり、建物全体の安定性と耐久性を確保するために非常に重要な役割を果たします。

その割に家づくりをする人にとってはあまり知られていない、住宅を売る営業マンもそれほど力を入れて解説しない分野なのではないでしょうか。
建物がどれほど強くても、基礎がダメであれば当然家が傾いたり、災害で破損して住めなくなったりということもあり得ます。
建物がどれほど強く、基礎がどれほど強くても、地盤が悪ければ同じです。

家づくりを考える際は、「地盤×基礎×建物」それぞれをバランス良く強くする必要があります。
どれかが欠けてもダメなのです。

基礎の種類

基礎にはいくつか種類が存在します。それぞれ紹介していきます。

布基礎

布基礎は、建物の外周や内部の主要な壁の下に帯状にコンクリートを打設する基礎工法です。
布のように連続していることから「布基礎」と呼ばれます。

一般的にベタ基礎より鉄筋コンクリートの量が少ないため費用が安くすみます。
しかし、建物を線や点で支えるため、地盤への負荷が大きくなります。
地盤の強い場所での建築に向きます。また、湿気が上がってくるため、換気計画をしっかりする必要があることと、シロアリの被害に気を付ける必要があります。
1980年代までは、一般的な基礎工法でしたが、建築基準法の改正や阪神大震災以降、ベタ基礎に移行する住宅会社が増えました。

セキスイハイムでも、2003年までは布基礎を採用していました。

ベタ基礎

ベタ基礎は、建物全体の下に一枚のコンクリートスラブを敷く基礎工法です。
面で建物を支えるため、地盤全体に荷重を分散でき、地盤沈下しにくく、建物の安定性が向上します。地面全体をコンクリートで覆うため、湿気やシロアリが防ぎやすいのも特徴です。

※シロアリについては こちらの記事をご覧ください。(気を付ける点はあります

コンクリートや鉄筋の使用量が増えるため、コストが高くなることがデメリットです。

その他の基礎

その他にも、柱それぞれが独立した基礎を持つ独立基礎や、鋼管杭などで、固い地盤と基礎を接続した「杭基礎」、もともと地盤が強く、強い地盤そのものの上に基礎を作る「直接基礎」などと分類したりもします。

杭基礎(左)と直接基礎(右)

布基礎とベタ基礎どっちが強いの?

耐震性の優劣は、条件次第なので一概には言えません。

どのようなコンクリート・鉄筋などの材料を使っているのか、基礎の幅や立ち上がりの高さなどもあります。
寒冷地と温暖な地域でも条件が違い、また施工精度や施工方法にも強度は左右されます。

それぞれ基礎に対する考え方も異なるので、候補と考えている住宅会社に詳しく聞いてみましょう。
では次に一般的な基礎工事の手順を見ていきましょう。

基礎工事の手順

間取りや家の仕様決めが終わり、土地決済や既存建物の解体が完了するといよいよ、地鎮祭を行い(やらない場合もありますが)、縄張り(配置確認)をして建物の位置を確定させます。
その後地盤改良が必要な場合は地盤改良工事を行い、いよいよ基礎着工へと進みます。

☆合わせて読みたい☆
【完全ガイド】初めての地鎮祭!安心して臨むための準備と流れ▸

  1. 遣り方
  2. 根切(ねぎり)工事(床堀工事)
  3. 地業(じぎょう)工事
  4. 配筋工事
  5. 型枠工事①
  6. コンクリート打設①
  7. 型枠工事② コンクリート打設②
  8. 養生・脱枠

1.遣り方

建物の配置が決まると、建物の配置に合わせて「遣り方杭(やりかたぐい)」と「水貫(みずぬき)」とよばれる建物の正確な位置や高さを出すための準備作業が行われます。

遣り方杭は地面に垂直に設置される杭で、水貫は地面に平行に設置します。
敷地内に動かない基準点を設け(ベンチマークBM)設計基準通りの高さになるように水貫の高さを調整します。これにより、基礎端・基礎芯・アンカー芯の水平を正確に保ちます。

2.根切(ねぎり)工事(床堀工事)

基礎や地下構造物を造るために、基礎を設置する部分の土砂を掘削していきます。
この深さも先ほど設置した水貫天端(水糸・ピンク色)から寸法を確認します。幅は土砂が左右から落ちてくることも考えて、10センチほど余裕を見て掘削します。

3.地業(じぎょう)工事

根切りで掘削した部分に決められた口径の砂利(砕石)を敷いていきます。基礎の荷重が均等にかかり、安定化を図るために実施します。

ソイルコンパクター(プレートコンパクター・プレートランマーとも呼ばれる)という機械を使い、40㎏~60㎏の荷重をかけて、砂利を締め固めていきます。
これをランマー転圧などと言ったりします。
全体を3往復ほど締固め、地業の厚さを60mmほどに仕上げていきます。

4.配筋工事

地面が整った後は、基礎の鉄筋をくみ上げていきます。これを配筋工事と言います。
コンクリートは圧縮強度(押しつぶす力)に強く、引張強度(引っぱる力)に弱いという性質があります。引っ張られる力に対抗するために、鉄筋を入れていきます。

鉄筋には異形鉄筋を使います。
表面に凸凹がありコンクリートとの結合力を強めます。
例えると、コンクリートは固いけど割れやすいガラスのようなもので、異形鉄筋は「強い糸」のように引っ張る力に強い存在と言えます。

基礎の品質に大きく影響する配筋工事

この配筋工事とても重要な工程で、配筋にも定められたルールがあります。
継手(つぎて)と言って、鉄筋と鉄筋の接続部分の長さを径の40倍以上にしなくてはいけないなどです。また、コンクリートの被り厚を確保することも非常に大切で、コンクリートの表面と鉄筋が近いと、酸素や水分と鉄が結合し錆による膨張でコンクリートが破壊されたりする恐れがあります。

特に、配管のスリーブを設置する部分などはコンクリートの被り厚が確保できないまま施工されてしまうケースなどがあるようです。
また、鉄筋と鉄筋の間がつまりすぎてしまうと、コンクリートがうまく間に入り込まず間隙ができてしまうこともありコンクリートがしっかりと入っていける空間が確保されているかも重要です。

上記部分に関しては40mm以上コンクリートの厚みが確保できるかチェックしています。

上記部分(スラブ)は70mm以上被り厚を確保します。黄色で示した部分は継手部分の長さチェックです。

5.型枠工事①

型枠といって、流動性のある生コンクリートを流し込む型を設置します。
型枠の中でコンクリートは、設計どおりの形状・寸法で固まります。型枠のゆがみや、隙間がないか、コンクリートを打設した際に、重さで変形しないように強固に固定されているかなどをチェックします。先ほどの鉄筋との被り厚もチェックが必要です。

6.コンクリート打設①

配筋、型枠工事が終わった基礎部分に生コンクリートを流しこんでいきます。
「生」ものですので、コンクリートは工場で材料を混ぜあわせた瞬間から材料同士が反応し徐々に固まっていきます。
そのため、日本建築学会JASS5の規定では、練り混ぜから打ち終わりまでの時間も厳格に規定されています。

意外と短いですよね。作業を手際よくしていく必要がありそうです。
また、上記写真の左側の人が緑色の機械を持っているのがわかると思います。これがバイブレーターと呼ばれる機械で、コンクリートに振動を与えてコンクリートを均一に密実に仕上げていきます。
余分な気泡の除去、密度の向上、均一にすることで、強度はもちろんのこと、美しい仕上がりを目指します。

コンクリートの品質に問題があったり、バイブレーターの作業にムラがあったりすると写真のような「じゃんか」と呼ばれる不良施工が発生する原因となります。

職人の手作業なので100%防げるわけではなく、補修をして仕上げますが、鉄筋などが露出するほどひどいものになるとNGです。

コンクリートの品質管理はこちらをご覧ください。

7.型枠工事② コンクリート打設②

スラブの打設が終わると、今度は基礎立ち上がり部の型枠を設置し、2回目のコンクリート打設を行います。注意点は先ほどと同じです。
基礎立ち上がり部分には「アンカー」とよばれる建物と基礎を緊結する重要な金具を設置します。正確な位置に設置されているかはもちろんのこと垂直に施工されているかチェックします。
コンクリートを打設しながらアンカーボルトを設置しないかも確認が必要です。正確に設置しにくいのと、後からアンカーを挿入してしまうと、コンクリートとアンカーの間に空気が入り、うまくコンクリートと密着しない可能性があります。

コンクリートの打設が完了すると、締固めと表面を鏝(こて)を使いきれいに仕上げていきます。
基礎立ち上がり部分にはレベラーと呼ばれる、自己流動性の高いコンクリートを施工し表面の凹凸を均一に平らにします。

このレベラー層に関しては、水分量の高いコンクリートを使用しているため、収縮で割れたりひびが入ることがありますが、強度を担保している部分ではないので気にしなくて大丈夫です。

雨の日のコンクリート打設はNG!

コンクリートにはJIS規格により、呼び強度(コンクリートの圧縮強度の強さ)等で水とセメントの比率が決まっています。

コンクリート打設前に、前日の降雨で型枠内に水が残っていたり、打設中にコンクリートに雨が混じることで、強度低下、耐久性の低下などコンクリートの品質に悪影響を及ぼす場合があります。

8.養生・脱枠

コンクリートの打設が終わると養生期間をとります。
この期間もとても大切です。コンクリートは、乾燥して固まるわけではありません。水和反応といって、水とセメントが化学反応をおこし、徐々に固まっていきます。
そのため、過度な乾燥や急激な温度変化、振動や外力がかからないように保護・管理(養生)します。コンクリートの強度や種類、その時の平均気温などによりコンクリートの強度が発現するまでの期間が異なりますので、脱枠するタイミングは様々ですが、だいたい3日~7日程度養生することが一般的です。

脱枠し(型枠を外す)、基準通りのサイズに仕上がっているか再度寸法を確認し基礎ができあがりとなります。(基礎立ち上がりのバリを除去したり、型枠の継部の段差処理をしたり、スリーブを外したりといろいろとありますが)

この一連の作業で、住宅の規模にもよりますが、約2週間~1カ月程度かかります。

コンクリート雑学

ここからは少しマニアックですが、コンクリートについての豆知識です。

そもそもコンクリートって何?セメント、モルタルとの違いは?

コンクリート、モルタル、セメントなどそれぞれ言葉は聞いたことがあるのではないでしょうか。
でも違いを説明できる人は少ないと思います。それぞれ解説します。

セメントとは

まずはセメントについて説明していきます。
セメントとは、石灰石を主原料として、粘土や鉄滓(てっさい・酸化鉄)、けい石などを焼き固めたクリンカと呼ばれるものに、石こうを加えたものをいいます。
このセメントに水を加えることで、化学反応を起こし、水和ケイ酸カルシウムなどが生成され、セメント粒子間を埋めていき強度が発現されます。

セメントにも、様々な成分を混ぜることで強度を上げたり、固まる速度を調整したりできます。
普通ポルトランドセメント(最も一般的なもの)、早強ポルトランドセメント(早く固まる、低温でも固まる)、高炉セメント、フライアッシュセメントなど種類があります。

コンクリートとは

  • コンクリート=セメント+水+粗骨材+細骨材
  • モルタル=セメント+水+細骨材

という違いがあります。
骨材とは、砕石や砂利のことを指し、ざっくりですが、5mm以下のものを細骨材、それ以上のものを粗骨材と言います。
細骨材=砂、粗骨材=砂利とイメージしていただければよいかもしれません。

なぜ骨材を入れるかというと、セメントと水だけだと水和反応が急激に起こり、セメント内部が100℃以上の高温にさらされます。
外気温と差が大きく生じるとコンクリートにひび割れなどを起こすことがあります。
骨材を入れることで、骨材自体は変化をしないため、発熱量が減らせます。ひび割れなどを防げるというわけです。
また、セメントは固化すると縮む性質があります。
骨材を入れることで収縮も緩和されこれまたひび割れを防ぎます。そもそもセメントよりも、骨材の方が安価なため、骨材を入れたほうが安く仕上げられるということがあります。

モルタルはどんな時に使うの?

モルタルは、大きな粒の砂利が入っていないので、なめらかで細かい作業に適しています。
レンガブロックなどの接合に使われたり、コンクリートの補修や壁の仕上げ材などに使われます。

なので、価格としては、『コンクリート<モルタル<セメント』といった感じになります。

コンクリートの種類

先ほど、セメントの種類もいろいろあると説明しました。コンクリートも配合により強度が変わります。コンクリートの強度は、主に圧縮強度であらわされます。

さきほども掲出したコンクリートの納入書ですが、呼び強度27と記されています。

ややこしいのですが、強度も「設計基準強度」「呼び強度」と2種類あります。
設計基準強度は、設計時にコンクリートが達成すべき基準となる強度のことで、呼び強度は、それを達成するために少し余裕をもって高めにコンクリート会社に発注する強度のことを言います。

その設計基準コンクリートは、
高強度コンクリート(24N/mm²以上)
高層ビル、橋梁、ダムなど、非常に高い強度が求められる構造物に使用されます。
中強度コンクリート(18N/mm²程度)
一般的な建物の基礎や壁、床などに使用されます。
低強度コンクリート(18N/mm²未満)
軽量構造物や非構造部材に使用されることがあります。

『24N/㎟』とは1㎝各のコンクリートで240kgの重さを支えることができます。
圧縮強度が高いと、耐久性もたかっく、長期間にわたって強度が維持できます。低強度になると、劣化が早くすすむ可能性があります。

低強度のものは、セメントの割合が少ないため安価となります。
このあたりもどの程度の強度(設計強度及び呼び強度)のコンクリートを使っているのかなども知っておくと良いでしょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。
ちょっと専門的な言葉や話が多かったと思いますが、ここまで読んでいただきありがとうございました。皆様の家づくりの一助となれば幸いです。

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