昨今、本格的な和室は作らず、リビングに畳スペースを設けるという人が増えています。
一方で、畳スペースを作らなければ良かったと後悔している人の声も聞かれます。
こちらの記事では、リビングに畳スペースを設けることで得られるメリット・デメリットを解説します。リビングに畳スペースを作るか迷っている方必見です!
間取りのトレンドから見る和室と畳スペース
畳数(帖数)という言葉があるように、日本では「畳」がとても身近なものでした。
古くは奈良時代に畳の原型が登場し、貴族や上流階級の住居で使用され、やがて室町~江戸時代には庶民にも普及したといわれています。
現代では、畳の使われ方や素材などにも変化がみられます。
和室と畳スペース(畳コーナー)の違いからまず説明していきましょう。
和室と畳スペースの違い
和室とは部屋全体が畳敷きで、専用の部屋として独立した形をとります。床の間や、障子などを設置したりします。
畳スペース(畳コーナー)はリビングなどの一角に設置され、仕切りを設置する場合もありますが、簡易的な仕切りが使われることが多いというのが特徴です。

和室は本当に減ってるの?
住環境研究所(積水化学工業100%子会社)から2025年2月14日にこのようなタイトルの調査報告書が発表されました「減るバルコニー・消える和室、間取りの新トレンド」
【出典】https://www.jkk-info.jp/publicity/deteil/id=213
セキスイハイムの間取り図面をデータベース化して研究しているのですが、和室の採用率は年々減少傾向にあります。
当社の手掛けている分譲住宅でも和室を採用しているケースはかなりレアです。
一方で、畳コーナーを設置される方は一定数おり、特に若い世代での採用率が高いというデータがあります。畳スペースを作る若い方は逆に増えているという結果になっています。
【関連記事】減るバルコニーについてはこちら▸
畳スペースを作る理由
では、和室は作らないけれど、畳スペースは作るという理由を見ていきましょう。
様々な利用の用途がある
畳スペースを作りたいと考える方は、以下のような目的で設置するようです。
- 子供の昼寝・遊び場
- 家族がくつろぐスペースとして
- 親や友達など、来客の宿泊用
- 将来の就寝スペース(2階の主寝室の代わりに)
- 子供の勉強・宿題スペースとして
- 来客の応対スペースとして
- 雛飾りなどを飾る場所として
- 家事(洗濯物を干す・畳む)
- 仕事場所として(リモートワーク)
空間の演出の1つとして
利用用途とは別に空間演出の1つとして採用されるケースもあります。
- LDKを広く開放的にしたい
- LDKのスペースに畳コーナーを設置することで空間に動きをだしたい
- 和風のコーナーを設置することで、ジャパニーズモダンのインテリアスタイルにしたい
先ほどの住環境研究所のアンケートにもあるように、若年層での畳コーナーの採用が一定数あるのは、「子供」が安全に遊べる場所として利用していることが伺えます。

畳スペースを作らない理由
一方で、和室も畳スペースを作らないという方は全体の半分になります。
言い方を変えると、畳のある部屋を作る方、作らない方がそれぞれきれいに2分されます。作らない理由も見ていきましょう。
経済的な理由
イニシャルコストの問題
当然畳スペースを設置しようとするとその分の面積が必要になります。
建築費が上がる要因になるため、欲しいけれど断念というパターンや、畳コーナーよりも収納を充実させた方がよいと考える方もいらっしゃると思います。
また、畳スペースで絶対に譲れないものが「畳」です。どのような畳の種類を選ぶかにもよりますが、一般的なフローリングに比べると畳の方が割高になることが多いようです。
ランニングコストの問題
畳には、種類もよりますがメンテナンスコストがかかります。
一般的な「い草」を使った畳ですと、設置後2~3年で「裏返し」、設置後5~6年で「表替え」というサイクルになります。
畳床が劣化してくると、畳そのものの入れ替えとなります。
裏返しとは、畳の表面を裏返しにして使うこと、表替えは表面そもそもを交換します。
裏返しの方が費用は安く、1畳あたり3,000円から5,000円ぐらいが相場のようです。
表替えは1畳あたり5,000円から10,000円ほどコストが必要になります。また畳のふち(縁)も日焼けなどにより劣化します。
縁(ふち)なし畳もあったりしますが、縁(ふち)の交換費用も1畳あたり、2,000円~とのことです。
日常的なメンテナンスの理由
こちらも、どのような素材でできた畳なのかによりますが、フローリングと違い素材として清掃しにくいのは確かです。
網目の間などはどうしてゴミやほこりが詰まりやすく日常の清掃は少し手間になるかもしれません。
虫・カビの発生リスク
い草には、「ダニ」「チャタテムシ」「カツオブシムシ」などの虫が発生するリスクがあります。
これらの虫は人のフケやアカ、カビなどを餌にして繁殖します。
ただ、ダニに関しては絨毯の方がダニの生息数が多いというデータもあるようなので、一概に畳だからダメというわけではありません。
また最近では、い草ではなく和紙や化学樹脂でできている畳も増えており、虫の発生を抑制し、メンテナンスが簡単でランニングコストがかかりにくいものも増えています。

結局使わなかった・・・という声
多用途に使える畳スペースですが、逆に言うと多用途だからこそ結局使わなかったという声も少なくありません。
フローリングスペースにしておいて、子供が小さいうちは「置き畳」を使うという選択肢もあります。女の子が生まれて、ピアノを習いだしたが、ピアノを置くスペースを考えてなかった。
「和室でなく、フローリングだったらなぁ・・・。」
なんていうことも起こるかも知れません。
畳の種類と選び方
ではここで、少し畳の種類についてみていきましょう。
材料の違い
材料 | メリット | デメリット |
---|---|---|
い草 |
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和紙 |
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樹脂 |
|
|
サイズなどの違い
畳には、地域によってサイズの違いがあります。
- 江戸間
- 京間
- 中京間
など少しずつ大きさに違いがあります。
また上記のサイズしかないわけではなく、特殊なサイズの間取りの場合は、それに合わせて畳が作られたりします。またそれぞれの半畳サイズもあります。
- 縁あり
- 縁なし
縁がない畳はすっきりとした見た目が特徴です。
和室だけでなく、洋室やリビングにもマッチするため畳スペースでは、縁なしを選択される方が多い印象です。
琉球畳と言われる種類もありますが、縁なしで半畳、い草も「七島い草」で作られものを言います。



畳の選び方
い草の匂いや自然の風合いを大事にしたい方、本格的な和室を作りたいという方は、い草を使った畳を選びましょう。
日焼けによる経年劣化もありますが、畳の風合いの変化を愉しめたりもします。
畳スペースとしてLDKに併設したい方は、フチなし畳や半畳サイズの畳を選ぶと良いでしょう。
和紙や樹脂の畳を選ぶことで、カラーバリエーションも豊富な中から、お気に入りのインテリアスタイルに合わせて柔軟に選択することが可能です。
将来のメンテナンスや、面倒なお手入れを避けたい方は樹脂製の畳が良いでしょう。
小さなお子様やペットがいるお宅にもおすすめです。
置き畳という選択も
畳スペースを作らない理由のところでも少し触れましたが、置き畳で一時的に畳スペースを作ることもありです。家族構成の変化や家族の成長に合わせて柔軟に変化ができます。

小上がりにあこがれる方は・・・


小上がりも憧れますね。小上がりもメリット/デメリットがそれぞれあります。
段差があることで、腰かけられたり、空間のメリハリを作る良い点もあります。逆に、バリアフリーではないので、小さな子供の落下の危険や将来の上り下りのリスクはあります。
これも、畳座収納などといった後付けの小上がり畳スペースを作ることができますので、後から追加/撤去することもできます。
畳スペースの実例集
さて、ここからは畳スペースの実例を見ていきましょう。
畳スペースの実例
小上がりスペースの実例
まとめ
いかがでしたでしょうか。
畳スペースは人により「いる」「いらない」がはっきり分かれるスペースかも知れませんね。
ご自身の生活スタイルやインテリアの好みなどによって設置を検討されると良いでしょう。
皆様の家づくりの一助となれば幸いです。
